アパートを贈与する時には要注意! 負担付贈与について

アパートを贈与する時には要注意! 負担付贈与について

最近は、相続対策の一環として生前贈与のご相談をいただくことが増えております。
先日は、親御さんがお持ちのアパートをお子さんに贈与したいとのご相談をいただきました。実は、賃貸中のアパートなどの収益物件を贈与する際には気を付けなければならないポイントがあります。この記事では、そのポイント「負担付贈与」についてお伝えします。

無視できない税金

贈与といえば贈与税のことを気にしなければなりません。

不動産を贈与する場合、贈与税の課税対象とされる贈与財産の価額は、財産評価基本通達の規定に基づいて計算した額(相続税評価額)となります。
相続税評価額は、土地の場合は路線価方式と倍率方式により計算し、建物については固定資産税評価額と同じです。これは一般的な取引価格よりは低い金額になります。

賃貸物件の場合は、ここから借地権、借家権等による調整を行いますので、さらに低い金額となります。
たとえば、取引価格 1億円(土地 5000万円 建物 5000万円)のアパートの場合、相続税評価額は6000万円ぐらいだったります。取引価格と比べるとずいぶん低い金額で評価されますよね。

入居者が預けた敷金は誰のもの?

ところで、一般的に、アパート等を借りる場合、その賃貸借契約には敷金が定められていることがほとんどです。
敷金とは、入居者の賃料等の債務を担保するために、あらかじめ賃貸人に差し入れる金銭のことです。そして敷金は、入居者が退去する際に、原状回復費等の入居者負担分を差し引いた残額が入居者に返還されます。

この敷金の返還義務ですが、アパート等が贈与された場合、移転前の所有者(今回は親御さん)から新所有者である子供に引き継がれることになっています。
つまり、新しい所有者は入居者が退去する際に敷金を返還する義務を負うことになります。
このように敷金の定めがある賃貸中のアパート等を贈与をする場合には、敷金を返還する負担付である贈与、つまり「負担付贈与」に該当するとされてしまう可能性があります。

負担付贈与の注意点

負担付贈与では、贈与税は負担分を差し引いて計算します。
仮に返還する敷金の合計額が500万円であれば、アパートの評価額から500万円を差し引いた額に対して贈与税が課せられます。

問題は、負担付贈与の課税価格は、贈与された財産が土地や借地権などである場合および家屋や構築物などである場合には、「その贈与時における通常の取引価額に相当する金額から負担額を控除した価額によることになっている」ことです。
つまり、贈与税の課税額が評価額の低い相続税評価額ではなく、通常の取引価格で評価されてしまうのです。
当然、支払う贈与税の額も多くなるでしょう。

これは、不動産の通常の取引価額と相続税評価額との開きに着目した贈与税負担回避行為に対して、税負担の公平を図るために講じられた措置です。

負担付贈与にならないようにするためには

それでは、通常の取引価格ではなく、相続税評価額で評価されるにはどうしたらいいでしょうか。

要は、敷金返還義務の負担付にならなければいいわけです。
つまり、敷金返還義務に相当する現金の贈与を同時におこない、受贈者に実質的な負担はないと認定してもらうことができれば、負担付贈与に該当しなくなるわけです。

このような理由から、ご相談いただきました事例では、税理士さんと相談のうえ、贈与する建物に加えて、親御さんが預かっている敷金相当額も合わせて贈与する旨の契約内容にしました。

まとめ

今回は負担付贈与に着目しましたが、アパート等の生前贈与を検討される場合には負担付贈与以外にも検討すべき事項が多々あります。また税務上の問題点もありますので、必ず税理士等の専門家を交えて検討しましょう。

この記事を書いた人

島 武志
司法書士

島 武志

静岡で生まれ育ち、高校まで過した後、京都で学び、就職で静岡に戻り、紆余曲折を経て、現在は静岡で司法書士として日々を過ごす。
相続、生前対策(遺言、民事信託など)、商業登記、企業法務、不動産登記など様々な分野に携わる。特に相続案件の対応件数は、これまで1000件以上。
仕事を行ううえで意識していることは「守破離」と「三方よし」。

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