相続人とは

Q

誰が相続人になりますか?

A

相続人になるのは、被相続人の配偶者、子供(直系卑属)、父母(直系尊属)、兄弟姉妹です。これらの方を法定相続人といいます。
また法定相続人には順位が決められており、順位の上の方がいる場合には順位の下の方は相続人になりません。
配偶者以外の相続人には順位が決められていて、上から①子供(直系卑属)、②父母(直系卑属)、③兄弟姉妹の順です。

Q

相続人が相続できる割合はどのようになりますか?

A

法律が定めた相続人が相続できる割合を法定相続分といいます。法定相続分は、相続人の組合せによって異なります。
①配偶者と子が相続人の場合 配偶者1/2,子1/2
なお、子供が複数いる場合、各子供の相続分は平等になります。
②配偶者と直系尊属が相続人の場合 配偶者2/3,直系尊属1/3
なお、直系尊属が複数いる場合、各直系尊属の相続分は平等になります。
③配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合 配偶者3/4,兄弟姉妹1/4
兄弟姉妹が複数いる場合、各兄弟姉妹の相続は平等になります。
また父母の一方のみが同じ兄弟姉妹の相続割合は父母が同じ兄弟姉妹の1/2となります。
④配偶者がいない場合
相続財産の全てを、同じ順番(1番:子供 2番:直系尊属 3番:兄弟姉妹)の相続人全員で平等に配分します。

相続財産について

Q

相続財産になるものを教えてください。

A

相続財産とは、相続開始時に被相続人が所有していた財産や権利、また負担していた負債や義務のうち、相続人に承継されるもののすべてです。
プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれます。一般的に以下のものが当てはまります。
①プラスの財産:不動産、現金・預貯金、有価証券、自動車、家財、宝石・貴金属、美術品、ゴルフ会員権、貸付金 など
②マイナスの財産:借金、住宅ローン、カードローン など

Q

死亡保険金は相続財産に含まれるのでしょうか?

A

受取人が決まっている生命保険の死亡保険金は、保険契約に基づく受取人固有の権利です。したがって、相続財産には含まれません。ただし、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。

相続の放棄

Q

相続放棄をするには、どのようにすればいいのでしょうか?

A

相続放棄は、自己のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内(この期間を「熟慮期間」といいます)に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出する方法により行います。

Q

相続放棄をする場合に注意することはありますか?

A

原則として、いったん相続放棄をすると撤回できません。
また、相続財産の一部を処分したり、隠したり、消費したりした場合には、相続することを承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなります。相続放棄後にこれらの行為を行った場合には相続放棄の効力が失われます。

遺産分割とは

Q

遺産分割協議書に書かなくてはならない内容を教えてください。

A

誰の相続手続きで、どの遺産を、誰が、どのような割合で取得するかを明記します。
一般的には、
・被相続人の本籍、住所、氏名、死亡年月日
・遺産の内容と各遺産を引き継ぐ相続人の氏名
などを記載することになりますが、必要に応じて、代償金の支払いや葬儀費用の負担、遺産の管理費用の精算、後日判明した遺産の取り扱いなどに関する事項を記載することもあります。
そして、作成日を記入し、相続人全員が署名したうえで実印で捺印します。

Q

話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成したほうがいいですか?

A

遺産分割協議を行った場合には、後日の紛争を防止するために遺産分割の内容を明記した遺産分割協議書を作成することが必要です。
また、預貯金などの遺産の解約手続き、不動産の名義変更の手続き、相続税の申告手続きの際に提出する必要があります。相続人全員が遺産分割協議書に署名し、実印で押印する方法で作成してください。
また、遺産分割協議書に実印が押されていることを確認するために、相続人全員の印鑑証明書を添付しましょう。

遺言について

Q

遺言をつくらないと相続手続きはどうなりますか?

A

遺言がある場合には、原則として遺言の内容のとおりに相続手続きが進みます。一方で遺言がない場合、法律で定められた法定相続人が相続します。具体的な財産の分配については、相続人全員による話合い(「遺産分割協議」といいます。)によって決める必要があります。話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所での調停や審判を行うこともあります。

Q

遺言が必要なのはどんなケースですか?

A

遺言作成の必要性が高いケースとしては、遺言でしか行えないことがある場合、紛争が予想される場合、相続人が高齢であったり遠隔地にいる場合などがあげられます。具体的には以下のようなケースでは遺言作成の必要性が高いといえます。
①夫婦間に子がなく、配偶者に全財産を残したい場合
②高齢の配偶者と海外在住の子供が相続人の場合
③再婚しており、先妻との間に子供がいる場合
④自分の意思で各相続人に財産を配分したい場合
⑤子の配偶者や内縁の妻(夫)など、相続人以外に財産を残したい場合
⑥相続人の1人に個人事業を承継させたい場合
⑦相続人がいない場合
⑧公益団体やお世話になった施設などに寄付をしたい場合

相続税について

Q

相続したら必ず相続税を支払うのですか?

A

相続税は、相続や遺贈によって取得した財産および相続時精算課税の適用を受けて贈与により取得した財産の価額の合計額(債務などの金額を控除し、相続開始前3年以内の贈与財産の価額を加算します。)が基礎控除額を超える場合に、その超える部分(課税遺産総額)に対して、課税されます。基礎控除額は、3,000万円+(600万円×法定相続人の数)の算式で計算します。

Q

相続税はいつまでに納付すればいいですか?

A

相続税の納付期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内です。

生前対策とは

Q

生前対策とは何ですか?

A

生前対策とは、自分の老後の生活や死後の財産承継や諸手続きへの備えを行うことです。一般的には、老後の体力の低下や認知症時の財産管理への備えである「財産管理対策」、相続後の紛争予防としての「遺産分割対策」、相続税の納税資金の準備や節税対策としての「相続税対策」などがあります。

Q

生前対策を行うにあたって重要なことは何ですか?

A

生前対策を行うには、ご自分がどのような生活をし、どのように家族や親族に財産を承継させたいのかを考える必要があります。
また、ご自分の考えを実現するには様々な手法を比較検討することも大切です。そのため、認知症などにより判断能力が低下してしまってから始めるのでは遅いことになります。お元気な今のうちから始めましょう。

親が認知症の場合

Q

遠方で暮らす親が認知症になってしまいました。
親の生活をサポートする制度はありますか?

A

成年後見制度の利用をご検討ください。成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々のために、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだりするなどの支援を行う制度です。成年後見制度には、大きく分けると、法定後見制度と任意後見制度の2つの制度があります。

Q

親が認知症になった場合、家族はどんなことに困りますか?

A

認知症になり判断能力や意思能力が失われると、ご本人は金融機関での預金の引き出しや不動産の売買、贈与などを行うことができなくなります。家族が代わって手続きを行うことも原則としてできませんので、生活費や施設への入居費用などを立て替える必要に迫られることがあります。

後見人とは

Q

後見制度には法定後見と任意後見があると聞きました。
違いを教えてください。

A

法定後見制度では、家庭裁判所が個々の事案に応じて成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)を選任し、その権限も基本的に法律で定められています。一方、任意後見制度では、本人が任意後見人となる方やその権限を自分で決めることができるという違いがあります。

Q

成年後見人の役割は何ですか?

A

成年後見人は、本人の生活・医療・介護・福祉など、本人の身のまわりの事柄にも目を配りながら本人を保護・支援します。
具体的には、不動産や預貯金などの財産を管理したり、本人の希望や体の状態、生活の様子などを考慮して、必要な福祉サービスや医療が受けられるよう、介護契約の締結や医療費の支払などを行ったりします。食事の世話や実際の介護などは、一般に成年後見人の職務ではありません。