亡くなった方が遺言を残していなかったということはよくあることだと思います。そのような場合、相続人となった方全員で話し合って、不動産や預貯金といった遺産の分け方を決めます。
この記事では、相続人全員の話し合い、遺産分割協議について解説します。
目次
遺産分割協議を始めるまでに準備しておくべきこと
遺産分割協議を始めるまでに準備しておくべきことは2点あります。
①遺産分割協議に参加する人=相続人は誰かを把握すること
②遺産分割の対象となる財産を把握すること
以上のことを準備してから、話し合いを始めましょう。
遺産分割協議に参加する人
仮に、法定相続人が1人しかいない場合は、その方がすべての遺産を取得するので協議を行う必要はありません。
ですが、法定相続人が2人以上いる場合はどのように分けるかについて、法定相続人全員での話し合いが必要です。1人でも欠けていると協議が成立しません。遺産分割協議を始める前に、誰が法定相続人であるかを確定させましょう。
なお、法定相続人が明らかであっても、法定相続人の中に
①行方不明で連絡がつかない
②未成年である
③認知症で判断能力がない
に該当する方々がいらっしゃった場合、そのままでは遺産分割協議を成立させることができないことができず、別途下記の手続きが必要なことがあります。
①の場合:「不在者財産管理人」の選任
②の場合:「特別代理人」の選任 ※ケースによっては不要です
③の場合:「成年後見人」の選任
いずれの手続きにも時間がかかりますので、そのような方がいらっしゃった場合は、速やかに相続の専門家にご相談されることをおすすめします。
また、①~③以外でも遺産分割協議に参加する当事者として、相続開始後に破産手続開始の決定を受けた方や包括受遺者など注意が必要なケースがあります。不安な方は私たちにお気軽にご相談ください。
なお、相続放棄をした場合は相続人ではなくなるため、遺産分割協議に参加できません。
遺産分割の対象となる財産
遺産の分け方を話し合うのですから、分割対象となる遺産が把握できていなければどうにもなりません。
相続財産の調査について詳しくは、「相続財産の調べ方」の記事を参照してください。
なお、遺産それぞれをどのように評価するかですが、遺産分割協議での遺産の評価方法に明確な決まりがあるものばかりではありません。
預貯金や上場株式のように評価額が明確なものはその価額に従えばよいです。しかし、相続開始から遺産分割まで時間がかかって財産価値が変わってしまうこともあるかもしれません。参考になる価格がいくつもある不動産は、「固定資産税の評価額」、相続税を計算するための「相続税評価額」、不動産会社が算出する「取引査定金額」、不動産鑑定士が算出する「鑑定評価額」などを参考にします。
遺産分割の方法
遺産を分割する方法には以下の4つがあります。
現物分割
遺産をそのまま相続人に割り振る方法です。
たとえば、不動産は長男、預金は長女、有価証券は次女がそれぞれ相続するといった方法です。
代償分割
1人または数人の相続人で遺産を相続しその代償に、残りの相続人に対して金銭(代償金)を支払う方法です。
たとえば、数人では分けづらい不動産を長男が相続し、長男が次男と長女にそれぞれ1000万円ずつ代償金を支払う方法です。
換価分割
遺産を金銭に換価して、その換価金を分配する方法です。現物分割等が困難であったり、相続人が金銭での分配を望んでいる場合に適しています。
共有分割
遺産を共同相続人の全員または一部の者の共有とする方法です。現物分割や換価分割が困難で、代償金の用意もできない場合などに用います。
以上、4つの方法はそれぞれ一長一短あります。
たとえば、②の場合、代償金を支払う相続人が直ちに代償金を支払える資力が必要です。
また④の場合、2人の相続人で不動産を2分の1ずつ相続した場合、もらえる遺産は公平ですが、将来にわたって問題なく共有状態を維持できるかはわかりません。
遺産の種類や形質、相続人それぞれの生活状況などの事情を考慮して、相続人全員で話し合いを進めましょう。
また、相続税が発生する場合や二次相続も考慮したほうがいい場合は、税理士にも相談したほうがいいでしょう。
遺産分割協議がまとまったら
法定相続人全員での話合いがまとまり、遺産の分け方が決まったら、遺産分割の内容を明記した「遺産分割協議書」を作成しましょう。
遺産分割協議書は、預貯金などの解約、不動産の名義変更、相続税の申告などの手続きの際に提出が求められます。また、後々の紛争を防ぐ観点からも大事な書類です。
分割協議書には
・被相続人の氏名、本籍、亡くなった時の住所、死亡年月日
・遺産の内容と、遺産を相続する人の氏名、相続する割合
を記載します。
必要に応じて、代償金の支払いや葬儀費用の負担、遺産を管理していた際の費用の精算、後になって判明した遺産の取り扱いについても書いておくとよいでしょう。
最後に、作成した日付を記載して、相続人全員が署名し実印で押印してください。実印であることを証明するために、印鑑登録証明書も添付して、一緒に保管しておきましょう。
遺産分割協議がまとまらなかったら
様々なご事情で、話し合いを重ねてもなかなか合意に至らないケースもあるかもしれません。
そのようなときは、弁護士などの代理人に交渉を依頼することも考えましょう。どうしても合意ができない、または話し合いすら難しいといった場合は、各共同相続人は、家庭裁判所に分割を請求でき、調停または審判で確定することになります。
なお、遺産の調査に手間取り、相続税の納付のために一部の不動産を換金したい場合や、一部の遺産についてのみ分割方法が決まらない場合で、確定している範囲で分割協議を先行したいこともあるでしょう。
そのような場合は、遺産の一部の分割協議であること、その他の遺産については後日遺産分割協議を行うことなどを明示したうえで、複数の分割協議を行うことは可能であるとされています。
ただ、二度手間になってしまうことは避けられませんので、特段の事情がない限り避けたほうがよいでしょう。
まとめ
遺産分割協議は相続人全員の合意に基づけばどのような内容でも有効です。必ずしも法定相続割合で相続しなければならないわけではありません。亡くなった方の想いも相続しながら、話し合いを進めていただければと思います。
私たち司法書士は公正中立な第三者として、遺産分割協議のサポートができます(※特定の方の代理人となることはできません)。
相続人が特定できない、協議に参加できない相続人がいる、不明な財産があり遺産分割協議が始められない、協議はまとまっているので分割協議書の作成は専門家にまかせたいといった遺産分割協議成立についてのお困りごとがある方は、ぜひ私たちにご相談ください。