遺産の名義を変更する

遺産の名義を変更する

被相続人の方の名義になっている遺産は、遺言があった場合は遺言にしたがって、また遺産分割協議が整ったら遺産分割協議の内容にしたがって、遺産の名義変更を行う必要があります。
遺産別にどのような手続きが必要か、簡単にご案内したいと思います。

名義変更が必要な遺産

不動産、預貯金、有価証券など、亡くなった方の名義になっている遺産はすべて名義変更が必要です。
遺産の種類ごとに見てみましょう。

不動産

土地や建物などの不動産の名義変更は、その不動産を管轄する法務局に申請して行います。
亡くなった方が市外や県外にも不動産を所有していた場合は、その管轄法務局に別々に申請する必要があるため、すべて完了するまでに時間がかかることが予想されます。

なお、登記申請の際には、登録免許税という国に納める税金を支払うことになっていますが、固定資産税の評価額が100万円未満の土地は特例で税金が免除されています。

不動産の名義変更はご自分で必要書類をそろえ登記申請書を作成して申請できます。
ただ、書類に記載に間違いがあったり、必要な書類がすべて整えられていないと法務局まで訂正に行かなければなりません。登記の専門家である司法書士にまかせると安心です。

また、農地や山林を相続した場合や、未登記の建物を相続した場合は別途届け出が必要です。

不動産の名義変更についての詳細はこちらの記事を参照していただければと思います。
不動産を相続する方へ~相続登記の義務化!?不要な土地は国に引き取ってもらえるのか?

預貯金

被相続人の方の口座がある金融機関で行います。

代表的な必要書類は
①亡くなった方の出生から死亡までの戸籍すべて
②相続人全員の現在の戸籍
③遺産分割協議書
④協議書に押印した相続人の印鑑証明書
⑤手続きに出向いた代表相続人の本人確認書類
⑥亡くなった方の通帳・カード・出資証券・定期預金証券
⑦金融機関所定の手続き書類

すべて原本が必要です。
①と②については、法定相続情報一覧図の提出でも問題ありません。
名義変更の手続き前に残高証明書を取得していた場合は、①②の提出が省略できる場合もあります。
また、遺言にしたがって名義変更する場合は、遺言の原本が必要です。

金融機関ごとに必要書類が異なることがあります。
また、金融機関によっては、来店日時の予約が必要なこともありますし、亡くなった方の口座がある支店でないと手続きを受け付けてもらえないこともあります。事前に金融機関のホームページを確認したり、口座がある支店に問い合わせをしたりするとよいでしょう。
大手都市銀行の場合は、相続業務を担当するセンターに書類が送付されそこで手続きが行われるため、時間がかかることもあります。

有価証券

上場会社の株式など、証券会社を通じて保有しているものは、証券会社で手続きを行います。
証券会社の手続きで必要な書類も金融機関とほぼ同じですが、やはりこちらも証券会社の支店やホームページで事前に確認しましょう。
なお、証券会社の場合も、相続業務を担当するセンターで一括して手続きを行っているため、3週間から1か月程度の期間を見ておいたほうがよいです。

上場されていない会社の株式の場合は、その会社に株主名簿の記載を変更してもらう手続きを行いたいことを連絡しましょう。会社所定の書類やその他必要書類の提出を求められると思います。

その他

1.自動車
名義変更する場合は、申請書を運輸支局に提出します。
申請書類は事前に必ず確認していただきたいですが、最低限下記の書類は必要です。
①自動車検査証(車検証)
②亡くなった方の出生から死亡までの戸籍すべて
③相続人全員の現在の戸籍
④遺産分割協議書(または遺言)
⑤協議書に押印した相続人の印鑑証明書
⑥新しい所有者の実印
⑦新しい所有者の印鑑証明書
⑧所定の申請書

また、自賠責保険やその他の保険に加入していた場合は、その変更手続きも必要です。
なお、自動車の名義変更手続きは行政書士の業務です。

自動車の名義変更手続きについて詳しくは、「所有者が亡くなった場合、自動車はどうなる?  相続手続きの手順と注意点」をご覧ください。

2.金やプラチナなど
金は延べ棒として現物を相続した場合は届け出は必要ありません。
貴金属会社や証券会社で金やプラチナなどの積み立てをしている場合は、その口座の名義変更が必要です。(インゴット、アクセサリー、置物などは相続税の課税対象になります。)

まとめ

以上、代表的な遺産の名義変更の手続きについて簡単に説明しました。
複数の金融機関や証券会社に口座がある場合、それぞれに原本の提出が必要なため、手続きに時間がかかってしまうことがあります。
また、亡くなった方の口座がある支店に出向いて手続きをしなければならないと、亡くなっている方と離れて暮らしている方や、平日働いていらっしゃる方には銀行・証券会社に行くための時間の確保が難しいでしょう。
ぜひ私たちにご依頼ください。
また、ここでは解説しませんでしたが、亡くなった方が金融機関から借り入れをしていた際には抵当権や根抵当権の相続手続きも必要です。
私どもではそういったお手続きも承ります。お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

島 武志
司法書士

島 武志

静岡で生まれ育ち、高校まで過した後、京都で学び、就職で静岡に戻り、紆余曲折を経て、現在は静岡で司法書士として日々を過ごす。
相続、生前対策(遺言、民事信託など)、商業登記、企業法務、不動産登記など様々な分野に携わる。特に相続案件の対応件数は、これまで1000件以上。
仕事を行ううえで意識していることは「守破離」と「三方よし」。

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