成年後見制度 判断能力が不十分な方々をサポートして権利を守る

成年後見制度 判断能力が不十分な方々をサポートして権利を守る

わたしたちは毎日の生活の中で、様々な「契約」を行っています。日用品の買い物や音楽のサブスクへの加入も、車や不動産の購入に比べれば金額は小さいですが、立派な「契約」の一つです。
自分にとって必要な「契約」を適切に結ぶ、そういった判断を自分ひとりで行うことが難しいときには、どうしたらよいでしょうか。
成年後見制度は、判断する力に応じて生活をサポートし、権利が不当に侵害されないように守る制度です。
この記事では、成年後見制度や後見人が果たす役割について概説します。

成年後見制度とは?

成年後見制度とは、判断能力が不十分な方々を、法律面や生活面で支援・保護する制度です。

認知症、知的障害、精神障害などの理由で、判断能力が不十分となってしまった方々は、財産管理(不動産や預貯金などの管理、遺産分割協議や相続放棄などの手続きなど)や身上保護(介護・福祉サービスの利用契約や高齢者施設への入所・病院への入院手続きなど)などの法律行為をご自分で行うのが困難になり、日々の生活や健康管理に支障が生じることが多々あります。
また、詐欺被害や、悪質商法の被害を受けるおそれもあります。

成年後見制度はこのような判断能力に不安のある方々を法的に保護し、ご本人の意思を尊重した支援を行います。

成年後見制度の種類について

成年後見制度には「法定後見制度」「任意後見制度」があります。

法定後見制度

法定後見制度は、すでに判断能力が不十分な方のための制度で、判断能力の低下の程度に応じて、
「補助」
「保佐」
「後見」
の3つの種類が用意されています。
家庭裁判所に成年後見人等の選任の申立てを行うことで利用でき、家庭裁判所によって選任された成年後見人等がご本人の支援を行います。

任意後見制度

判断能力に問題がないときに、ご自身が選んだ人(任意後見人受任者)との間で、将来判断能力が不十分になった際に受ける支援の内容をあらかじめ契約で決めておく制度です。
任意後見人による支援は、ご自身の判断能力が不十分になったときに、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てることで始まります。

制度のまとめ

法定後見制度、任意後見制度を一覧にしてみました。

法定後見制度任意後見制度
補助保佐後見任意後見
対象となる方判断能力が不十分な方判断能力が著しく十分な方判断能力が欠けている状態が通常の方将来の判断能力の低下に備えたい方
申し立てできる人本人・配偶者・4親等内の親族・検察官・市町村長など本人・配偶者・4親等内の親族・検察官・市町村長など本人・配偶者・4親等内の親族・検察官・市町村長など本人・配偶者・4親等内の親族・任意後見人受任者
制度の利用方法家庭裁判所への補助開始の申立て
※代理権付与・同意権付与の申立て(少なくとも1つは必須)
家庭裁判所への保佐開始の申立て
※代理権・同意権付与の申立て(任意)
家庭裁判所への後見開始の申立て
・あらかじめ公正証書による任意後見契約の締結
・本人の判断能力の低下
・家庭裁判所への任意後見監督人選任の申立て
支援者補助人保佐人成年後見人任意後見人
支援者を監督する人補助監督人
※必要に応じて
保佐監督人
※必要に応じて
成年後見監督人
※必要に応じて
任意後見監督人
支援者の権限・同意権・取消権
※申立ての範囲で家庭裁判所が審判で定めた民法13条1項所定の行為の一部

・代理権
※申立ての範囲で家庭裁判所が審判で定めた範囲
・同意権・取消権
※民法13条1項所定の行為

・代理権
※申立ての範囲で家庭裁判所が審判で定めた範囲
財産・身上監護に関する法律行為の取消権・代理権
代理権
※契約で定めた範囲

成年後見人等の役割

成年後見人等は、本人の生活・医療・介護・福祉など、本人の身のまわりの事柄に目を配りながら本人を保護・支援します。
また、支援にあたっては、本人の意思を尊重しなければなりません。
後見人等が行う支援は大きく「財産管理」「身上監護」に分けられます。

財産管理

預貯金の払戻し、口座の解約、自宅・アパート・駐車場等の管理・処分、税金や医療費、施設利用料等の支払いなど、多岐に渡ります。

身上監護

施設への入所契約、病院での医療契約、介護サービス、福祉サービスの利用など、多岐に渡ります。
ただし、食事の世話や実際の介護などは、成年後見人等の職務ではありません。

また、成年後見人等はその事務について家庭裁判所に報告するなどして、家庭裁判所の監督を受けることになります。
なお、任意後見人は上記の財産管理や身上監護を、任意後見契約で決められた範囲内で執り行います。

まとめ

すでに判断能力が低下してしまった方の支援を行う場合には法定後見制度の利用を検討することになります。

一方で、ご自分の判断能力の低下に備えたい方は任意後見制度の利用を検討することができます。
また、現時点で判断能力が十分であれば、家族信託、見守り、財産管理契約といった方法でも生活支援や財産管理に備えることができます。

ご自分やご家族にどのような制度が利用可能であるか、またそのメリット・デメリット等が気になる方は、お気軽に「相続・生前対策サポートしずおか」へお問い合わせください。

この記事を書いた人

島 武志
司法書士

島 武志

静岡で生まれ育ち、高校まで過した後、京都で学び、就職で静岡に戻り、紆余曲折を経て、現在は静岡で司法書士として日々を過ごす。
相続、生前対策(遺言、民事信託など)、商業登記、企業法務、不動産登記など様々な分野に携わる。特に相続案件の対応件数は、これまで1000件以上。
仕事を行ううえで意識していることは「守破離」と「三方よし」。

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