最近注目の死後事務委任契約とは? 子供のいないご夫婦や独身の方必見

最近注目の死後事務委任契約とは? 子供のいないご夫婦や独身の方必見

「終活」は、お子さんのいないご夫婦や独身の方にとってはとりわけ重要なテーマです。特にそのような方を中心に最近、死後事務委任契約に対する関心が高まっています。
この記事では、死後事務委任契約の基本的な説明やそのメリット、さらに遺言との対比について詳しく説明します。

死後事務委任契約とは

死後事務委任契約とは、ご本人が第三者(法人を含む) に対して、ご本人の亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等に関する代理権を与えることで、死後の事務を委任する契約をいいます。

一般的に次のようなことを委任することができます。
①死亡届などを行政諸官庁等へ届け出る
②通夜、葬儀、告別式、火葬、納骨、永代供養等を執り行う
③公共サービス(電気・ガス・水道)、各種会員、定期購入等を解約したり清算したりする
④生前の医療費・施設利用料等の未払い金を支払う
⑤賃借建物明渡しや家賃・地代・管理費等の未払い金を支払う、敷金・保証金等を清算する

死後事務委任契約の有効性

民法653条1項には、委任した人が死亡した時には委任契約は終了すると規定されています。 しかし、死後事務委任契約は委任した人がお亡くなりになったときの手続きを任せる内容なので、もしも委任した人がお亡くなりになった時に契約が終了してしまうとすると、まったく意味がない契約になってしまいます。
ですが、この点については、ご心配いりません。この民法の規定は任意規定であって、特約によってこれと異なる定めをすることができます。このことは、平成4年9月22日に出された最高裁判所の判決でも認められており、死後事務委任契約は有効とされています。

死後事務委任契約は誰とどのように結ぶ?

死後事務委任契約で委任する内容には、たとえば賃貸借契約の解除や年金受給者の死亡手続きといった専門性の高い手続きなども含まれます。ですから、法律の専門家など信頼できる第三者に委任することが重要です。
また、契約を結んでも実際に委任した事務を遂行してもらうのは、ご自分が亡くなった後になるので、10年、20年先になる可能性も十分にあります。継続性を考えて法人や複数の専門家が所属している組織などを選ぶことも考えた方がよいでしょう。
そして、委任する内容は契約書として書面にまとめておくことが大切です。
契約書は、委任者(まかせる人)と受任者(まかされる人)が任意の書式で作成しても法律的には有効です。
ですが、お亡くなりになられた後に受任者が役所や手続の相手先に提示しながら使用することを考えて、公正証書で作成しておくことをおすすめします。

死後事務委任契約に関する費用

死後事務委任に関して考慮しなければならない費用については、大きく分けて次の2つがあります。

①葬儀、納骨、居宅の片付けなどに要する費用(実費)
②死後事務委任の受任者の報酬

①については、生前(できれば死後事務委任契約の締結前)に葬儀社や片付け業者などから見積を取得したり、可能であれば予約契約をして費用を前払いしておくこともできます。そうでない場合には、②の費用と併せて死後事務委任契約の締結時に受任者に預けておくことが多いです。
費用等を前払いしたり、預けておく場合には、領収書や預り証を受け取ることはもちろん、費用をしっかり管理してくれるか(信託会社に預けるなどの保全方法をとっているか)確認しておくことが大切です。

死後事務委任契約のメリット

死後事務委任契約には、以下のようなメリットがあります。

親族や地縁者の負担軽減

子供のいない夫婦や独身者の場合、普段ほとんど付き合いのない親族や地縁者が葬儀や行政諸官庁への届出などの手続きなどを行わなければならないケースもあります。
死後事務委任を結んでおくことで、このような人に負担をかけることなく死後の諸手続きを行ってもらうことができます。

希望に沿った葬儀・納骨等の実現

上記1のような場合はもとより、家族や相続人がいる場合でも、普段のコミュニケーションが十分でない場合など、葬儀や納骨等についてご本人の遺志を反映してくれるとは限りません。
死後事務委任を結んでおくことで、ご本人の希望に沿った葬儀・納骨等を実現してもらうことができます。
最近では、散骨や樹木葬などを希望する人も増えてきましたが、死後事務委任契約でそのようなことをお願いすることも可能です。

相続手続きの円滑な実施

死後事務委任の受任者は、死後事務を行ったあとの遺された財産について、相続人や遺言執行者に引き継ぎます。死後事務委任を結んでおくことで、その後の財産の分配などの相続手続きの円滑な実施へつなげることができます。

死後事務委任契約と遺言との関係

死後のことを生前に定めておくと聞くと、遺言を思い浮かべる方も多いと思います。
死後事務委任契約と遺言はどのような関係にあるでしょうか。

死後事務委任契約は上記のとおり、お亡くなりになられた直後からの諸手続きを委任するものです。一方、遺言は主にその後に遺された財産を誰にどのように分配するかを決めておくものです。子供のいない夫婦や独身者は、遺言に関する遺言執行者についても専門家に指定しておけばより安心です。

つまり、死後事務委任契約と遺言は相互補完的な関係にあります。
死後事務委任契約によってお亡くなりになられた直後の葬儀・納骨や財産の管理・清算手続きが行われ、遺言によってその後に遺された財産の分配が明確化されます。

まとめ

以上のように、死後事務委任契約は、子供のいない夫婦や独身の方にとって有益な選択肢となります。
葬儀や納骨、遺品整理ついて、ご自分の意思を反映させながら第三者に手続きをまかせることができます。遺言と組み合わせ、最終的な遺産の分配までを考えて準備しておくとさらに安心です。相続対策の一つのメニューとして死後事務委任契約の活用を検討してみましょう。
私たちも死後事務委任の委任者となることもできます。お気軽にご相談ください。
また、すでに相続が発生しているケースで、いろいろなご事情により亡くなった方の死後事務手続きを行うことが難しい場合も手続きをお引き受けすることができます。こちらについても詳細をお問い合わせください。

この記事を書いた人

藤浪智央
司法書士

藤浪智央

2000年大学在学中に司法書士試験に合格。地元信用金庫勤務を経て2009年7月司法書士登録。
座右の銘は「努力に勝る天才なし」。少子高齢化、個人の権利意識の高まりなど、社会環境の変化により大きく変わっている相続関連の法律や制度に常に対応し、お客様に満足いただけるように心がけています。

この人の記事一覧を見る