生命保険と相続 親が亡くなり死亡保険金を受け取れるみたいだけど…税金のことも教えます

生命保険と相続 親が亡くなり死亡保険金を受け取れるみたいだけど…税金のことも教えます

「亡くなった親の遺品を整理していたら、生命保険の証書が見つかった。どうやら死亡保険金を受け取れるようだけど、これって相続人全員で分けるものなの?」「土地や建物、銀行預金などと同じく相続税の対象になるものなの?」 この記事では、遺産に生命保険が含まれていた際の様々な疑問にお答えします。

死亡保険とは

一般的に人にかかわるリスクに備える保険を生命保険といいます。 生命保険はその目的によっていくつかに分けられますが、その中でも保険の対象者(被保険者)が死亡または高度障害状態になった場合に、家族の生活費を保障するための保険を「死亡保険」といいます。
生命保険には、病気やケガによる入院・手術などに備える「医療保険」や「がん保険」、病気やけがによって収入が減ることに備えた「就業不能保険」、将来の生活や出費に備える「個人年金保険」「学資保険」などがあります。

死亡保険の登場人物

死亡保険は、保険会社との契約によって加入します。この契約手続きを行って保険料を支払う人のことを「契約者」といいます。また、契約の中で、誰が死亡した場合に保険金が支払われるかを決めますが、この人のことを「被保険者」といいます。さらに契約の中で被保険者が亡くなった際に実際に保険金を受け取る人も指定しますが、この人のことを「受取人」といいます。

この「契約者」「被保険者」「受取人」はすべて別人とすることも、同じ人とすることもできますが、これらの登場人物の関係によって、次に説明するように相続時の扱いや税金の扱いが変わってきます。

死亡保険と相続

①上記の登場人物のうち、「契約者」と「被保険者」が被相続人(亡くなった方)で、「受取人」が相続人のうちの1人もしくは第三者になっている契約について支払われた死亡保険金は、被相続人の相続財産に含まれず、受取人の固有財産としてみなされます。そのため、たとえば受取人である相続人が相続放棄をした場合でも死亡保険金を受け取ることができます。

②「契約者」が被相続人、「被保険者」が被相続人以外の死亡保険契約については、被保険者が亡くなっていない限り死亡保険金は支払われません。この場合、契約者が亡くなったため生命保険の契約は終了しますが、契約者が今まで負担していた保険料に応じて算出される解約返戻金を請求することができる場合があります。この返戻金の請求権が相続財産となり、法定相続人へ相続されます。

③「契約者」「被保険者」「受取人」がすべて被相続人の場合、死亡保険金は相続財産となります。この場合は、不動産や預貯金と同じく相続人間で遺産分割協議をすることになります。

④「契約者」「被保険者」が被相続人で、「受取人」が契約上指定されていない場合には、死亡保険金の受取人は保険契約約款の内容で決まります。約款上「相続人に支払う」とされていることが多いようです。この場合、特段の事情がない限り、法定相続分の割合に従い、死亡保険金を分配することとなります。なお、約款に割合の定めがある場合には、その定めに従い分配することとなります。約款で受取人が指定されていない場合は、保険法の規定で保険金は各法定相続人に均等に分割されます。(法定相続分の割合で決めるのではなく全員同額となります。)

契約内容契約者被保険者受取人相続財産となるか
被相続人被相続人相続人または
第三者
ならない
(受取人固有の財産)
被相続人被相続人以外なる
(解約返戻金の請求権)
被相続人被相続人被相続人なる
被相続人被相続人指定されていない約款の保険金受取人の記載による

死亡保険にかかる税金

先ほど、「契約者」と「被保険者」が被相続人(亡くなった方)で「受取人」が相続人などの場合は死亡保険金は相続財産に含まれないと書きましたが(上記①のケース)、この場合、「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。ただし、受取人が相続人の場合は、「500万円×法定相続人の人数」の金額までは非課税になります。
その他、「契約者」と「被保険者」が異なり、「被保険者」が被相続人(亡くなった方)となっているため、死亡保険金が支払われる場合、「契約者」と「受取人」が誰であるかによって課される税金の種類が変わります。「契約者」と「受取人」が同一人の場合には所得税の課税対象、「契約者」と「受取人」が別人の場合には贈与税の課税対象になります。

契約者被保険者受取人税金の種類
契約者と被保険者が同じA
(被相続人)
A
(被相続人)
B相続税
契約者と受取人が同じBA
(被相続人)
B所得税
契約者、被保険者、受取人
が異なる
BA
(被相続人)
C贈与税

生命保険契約照会制度

亡くなった方が契約した生命保険があるかもしれないが、証券や保険会社からの案内などがないのでわからないといった場合に、調べる方法があるのでしょうか。
実は、生命保険契約の手がかりがなくて困ったときのために、親族等が申し出れば、「一般社団法人 生命保険協会」を通じて、生命保険会社42社へ保険契約の有無を一括で照会できる「生命保険契約照会制度」が令和3年(2021年)7月から始まりました※1
照会の費用は1件につき3,000円(税込)で、オンラインまたは郵送により申請できます。
申請の際は、照会者の本人確認書類や相続関係を証明する戸籍などが必要です。
照会申請後、利用料金の支払いが確認できた時から2週間程度で、生命保険会社ごとに生命保険契約の有無が開示されます。ただしこれは、「契約の有無」が開示されるだけなので、詳細な保険契約の内容は、各保険会社へ個別に確認する必要があります。そして、契約があった場合は、保険会社のコールセンター等へ問い合わせ、保険金を請求する手続きをしていくことになります。

※1「政府広報オンライン」

まとめ

以上のように、一口に生命保険契約といっても「契約者」「被保険者」「受取人」が誰なのかなど、契約内容によって相続手続き上の取り扱いや税金の種類が違ってきます。まずはどのような内容の契約なのかを確認するところから始めることが必要です。相続人の方がご自分で手続きをするのが難しいようであれば、預貯金や不動産など他の相続財産の手続きとともに専門家に依頼することもできます。
私どもでも遺産承継業務としてお手続きをさせていただくことができますので、まずはお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

藤浪智央
司法書士

藤浪智央

2000年大学在学中に司法書士試験に合格。地元信用金庫勤務を経て2009年7月司法書士登録。
座右の銘は「努力に勝る天才なし」。少子高齢化、個人の権利意識の高まりなど、社会環境の変化により大きく変わっている相続関連の法律や制度に常に対応し、お客様に満足いただけるように心がけています。

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