所有者が亡くなったら、自動車はどうなる?  相続手続きの手順と注意点

所有者が亡くなったら、自動車はどうなる?  相続手続きの手順と注意点

旅行や遠出だけでなく、買い物、通勤などの日常生活に自家用自動車を利用している方は多いでしょう。特に、首都圏のように交通機関が発達していない地方では、1世帯で数台所有していることもありますね。
亡くなったご家族が自動車を所有していらっしゃった場合、その車をどうすべきか、頭をなやませる方も多いと思います。気をつけたいのは、自動車も相続財産になることです。また、車を相続せず売ったり廃車にしたりする場合も、いったんは相続人が自動車を相続する必要があります。
この記事では、自動車の相続手続きについて解説します。

自動車の相続① まずは車検証を確認

亡くなった方(被相続人)が自動車を使用していたら、まずはその自動車の自動車検査証(車検証)を見てみましょう。車検証は自動車の中に保管されていることが多いと思います。

車検証には、自動車登録番号、車名、車台番号、型式など自動車を特定する情報のほか、「所有者」の氏名・住所、「使用者」の氏名・住所も記載されています。自動車の所有者は、「所有者」の欄から確認できます。

亡くなった方が日常的に運転していた自動車だからといって、その方が自動車の真の所有者とは限らないのです。

①「所有者」が被相続人だったら・・・
その自動車は被相続人の相続財産です。遺産分割協議の対象です。

②「所有者」がディーラーやクレジット会社だったら・・・
自動車ローンを組んで車を購入すると、所有者欄にディーラーやクレジット会社の名称が記載されます。
ローンを完済したら「所有権解除」という手続きを行って所有者を変更しますので、所有者がディーラー等のままの場合、ローンが完済していないか、もしくはローンを完済したのに解除の手続きを行っていないか、のいずれかが考えられます。
まずはディーラー等に連絡し、使用者である被相続人が亡くなったことを伝え、残債の金額を確認しましょう。
もしローンの支払いが残ってたら、相続人が返済しなけばなりません。返済をしないと名義を相続人に移すことができません。
完済しているのに所有者の名前が変わっていなかったら、所有者を変更する必要がありますので、やはりディーラー等に連絡しましょう。

自動車の相続② もしも車検証が見つからなければ

車はあるのに、車検証が見当たらず、所有者の確認ができない場合は、次の資料を探してみましょう。

①自動車の納税通知書
普通自動車は都道府県税事務所から、軽自動車は市町村から、毎年4月1日時点で車の所有者の住所宛に、納税通知書が送られます。したがって、納税通知書を受け取っていれば自動車の所有者である可能性が高いです。

②自動車保険証券
自動車保険証券にも、自動車の所有者が記載されています。また、保険証券は、自動車保険の名義変更にも必要です。

③所得税の確定申告書
社用車としても使用しており、会社で購入したものかどうか判断がつかないときは、所得税の確定申告書を見るとよいでしょう。事業用であれば、決算書の減価償却費の明細書に記載があります。

自動車の相続③ 車を査定してもらおう

所有者が確認できたら、遺産分割協議や相続税の申告のために、自動車の評価額を調べる必要があります。
査定は、一般財団法人日本自動車査定協会(http://www.jaai.or.jp/)や、ディーラー・買い取り業者が行ってくれます。
査定後には、査定書や査定士証を発行してもらいましょう。
査定費用は、車種によっても異なりますが、一般財団法人日本自動車査定協会に依頼すると1万円程度です。

自動車の相続④ 車を引き継ぐ人を決めよう

自動車の査定額が判明し、相続財産の目録を作成したら、相続人全員で遺産分割協議を行って、自動車を相続する方を決めましょう。不動産や預貯金を引き継ぐ人を決めるのと同じですね。(詳しくは、こちらの記事も参照ください。遺産の分け方を決める相続人全員の話し合い 遺産分割協議とは」

不動産は、遺産分割協議書に、所在や地番、地積などを記載することで特定しますが、自動車の場合、自動車登録番号と車台番号で、相続対象となる自動車を特定します。自動車登録番号と車台番号は、車検証に記載されています。

また、遺産分割協議書には以下のように記載するとよいでしょう。

1.下記の自動車は、相続人 山田太郎が相続する。
自動車登録番号 静岡 ○○○ あ ○○○
車台番号 A-12345678

自動車の相続⑤ 名義変更の手続きをしよう

分割協議が整い、自動車を相続する人が決定したら、自動車の所有者の名義変更を行いましょう。

1.申請する機関
名義変更(移転登録)を申請する機関は、自動車が登録自動車(軽自動車以外)か軽自動車によって管轄が異なります。管轄機関は車検証の発行元で確認できます。

登録自動車運輸支局 または 自動車検査登録事務所
軽自動車軽自動車検査協会

2.必要書類
それぞれ、以下の書類が必要です。※どなたかお一人だけが自動車を相続する場合です。

(1)運輸支局に申請する場合
・申請証
・相続人全員が押印した遺産分割協議書
・所有者である被相続人の出生から死亡までの戸籍一式
・相続人全員の現在の戸籍
・自動車を相続した相続人の印鑑証明書
・自動車を相続した相続人の実印
・車検証
・車庫証明書
・手数料の印紙代 500円
亡くなった方と新所有者が同じ住所にお住まいで、車の保管場所に変更がなければ車庫証明書は必要がないこともあります。

なお、自動車の査定価格が100万円以下でしたら、遺産分割協議書の代わりに「遺産分割協議成立申立書」を提出することもできます。
遺産分割協議申立書でしたら、自動車を相続する人が実印で押印すればよいので、分割協議書を準備するより簡単です。ただし、査定価格が100万円以下であることを証明するために、査定証の提出が必要です。

(2)軽自動車検査協会に申請する場合
・申請証
・所有者である被相続人が亡くなった記載がある戸籍
・新たに所有者となる相続人と被相続人との関係がわかる戸籍謄本
・自動車を相続した相続人の住民票または印鑑証明書
・自動車を相続した相続人の認印
・車検証
・手数料の印紙代 500円

自動車の相続の注意点① 自動車の移転登録は15日以内?!

道路運送車両法という法律によって、被相続人の相続開始日から15日以内に自動車の移転登録をしなければならないことになっています。
戸籍を取り寄せて相続人を確定させるだけでも、2週間以上かかることもありますから、「亡くなってから15日以内」に査定も分割協議も行うのは厳しいスケジュールです。
ですが、もし万が一被相続人名義の自動車に乗っていて事故が起きてしまったら、相続人全員がその責任を問われる危険性があります。可及的速やかに名義を変更されることをおすすめします。

自動車の相続の注意点② 自動車保険の手続きも忘れずに

自賠責保険や任意で加入している自動車保険、いずれの場合もそれぞれ変更の手続きが必要です。
保険契約をそのまま継続する場合も、解約する場合も、いったんは相続人の名義に変更します。
保険会社に連絡して必要書類を取り寄せましょう。
万が一事故を起こしても保険が使えない恐れがありますので、自動車の名義変更を済ませましたら、保険の手続きも速やかに行いましょう。

自動車はまずは相続。名義変更を行った後、所有するか否かを考えましょう

以上、自動車の相続及び名義変更について簡単に説明しました。
登録自動車と軽自動車とで違いはあるものの、だいたいの流れはおわかりいただけたかと思います。

なお、車検切れの場合はそのまま名義変更ができず、一時抹消登録手続きなども必要になってきて、さらに手間がかかります。
自動車の名義変更手続きを行えるのは、行政書士の業務範囲であるため、私ども司法書士は代理人になれません。
お手続きに不安がある場合は、行政書士の先生をご紹介いたします。お気軽にご相談ください。

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