ペットは相続の対象になる? ~もしものときに備えてペットのために準備しておくこと

ペットは相続の対象になる? ~もしものときに備えてペットのために準備しておくこと

「ひとり暮らしだけど、ペットが一緒だから寂しくない」そんな方も多いと思います。ペットは大事な家族ですよね。「でも、もしも私がいなくなったらこの子はどうなってしまうのだろう」「他に財産を遺したい人もいないし、私が亡くなったら私の財産はこの子に遺してあげたい」そんな願いを叶えることはできるのでしょうか。また、今からできる準備はあるのでしょうか。この記事で解説します。

飼い主が亡くなったらペットはどうなるのか

家族同然に暮らす飼い主の方にとっては切ない話かもしれませんが、ペットは法律上「人」ではなく「物」として扱われます。
亡くなった方が飼っていたペットは、亡くなった方が所有していた預貯金や車、貴金属などと同様、相続財産として相続の対象となります。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議などにより、ペットを相続する人が決まるまでは、相続人全員の共有財産となります。
ペットをめぐる相続の話がまとまらないと、それによって他の財産の相続手続きも滞ってしまうということも考えられなくもありません。また、ペットが相続争いに巻き込まれると、「世話をしてくれる人がいない」という状態に置かれてしまう可能性もあるのです。

ペットに遺産を相続させることができるのか

すでに述べたように、ペットは法律上「人」ではありませんので、財産を所有することができません。ですから、残念ながらペットに直接財産を遺すことはできません。そのような内容の遺言を書いたとしても法律上の効力はないのです。
また、もし仮にペットが財産を所有することができたとしても、ペットは世話をしてくれる人がいなければ、その財産を使うこともできないですし、一人で生活していくこともできないですよね。
それでは、飼い主が亡くなったあともペットが困らないようにするには、どのようにしたらよいのでしょうか。
ここでは3つの方法を紹介します。

負担付遺贈:世話をしてくれる人にペットと財産を遺す

1つ目の方法は、ペットの世話を頼みたい人に、「ペットの世話をしてくれること」を条件にペットと財産を遺すという内容の遺言書を作成することです。遺言によって亡くなったら財産を与えることを遺贈といい、「ペットの世話をしてくれること」というような条件をつけた遺贈を「負担付遺贈」といいます。

法律上、受贈者(財産をもらう人)は遺贈された財産の範囲でしか負担履行の義務を負いませんので、負担付遺贈を行う場合は、受遺者が将来にわたってペットを飼い続けられるだけの財産を遺贈することが必要です。
あらかじめ受遺者の承諾を得なければ遺言書を作ることができないわけではありませんが、受贈者は、遺言の効力発生後に遺贈を放棄することができるとされています。つまり、せっかく遺言を作っても、亡くなったあとに受遺者が「そんなこと、お断りだ」と思ったら、遺贈を放棄してペットを引き取らないことができるのです。
ですから、遺言を作成するにあたっては、受遺者にしっかりと説明して、受遺者の了解を得ておくほうがよいでしょう。

負担付死因贈与契約

遺言ではなく、亡くなったあとにペットの世話をお願いしたい人との間で、あらかじめ生前に契約をしておくこともできます。「亡くなったら財産をあげる」という契約を死因贈与といい、上述の負担付遺贈と同じように「ペットの世話をする」というような条件をつけているので、「負担付死因贈与契約」といいます。

負担付遺贈との違いは、遺贈が単独行為であるのに対して、死因贈与は財産をあげる人と財産をもらう人との契約であるということです。ですから、契約違反がない限り財産をもらう人が一方的に放棄することはできませんし、契約を取り交わしているため、きちんと負担を実行してくれる可能性も高いといえるでしょう。

ペット信託

負担付遺贈・負担付死因贈与いずれにおいても、遺贈・贈与された財産は、受取った人の固有財産となってしまいます。ですから、その財産を本当にペットのために使ってくれるかどうか、不安に思う人も多いでしょう。そのような不安を解決するために「信託」を利用する方法もあります。

「信託」とは、自分の財産を信頼できる人に託し、一定の目的のために管理・使用してもらう契約です。
具体的には、ペットの世話をしてくれる人と別に財産を管理してくれる人を探し、ペットの飼い主を委託者、財産を管理する人を受託者、ペットの世話をする人(財産を管理してくれる人から世話をするのに必要な財産を受け取る)受益者を定めて、信託契約を締結します。

これにより、その信託財産はペットの世話という信託契約で定めた範囲内でしか利用できないので、ペットのために財産が使われないのではないかという不安は解消されます。当然、信託契約は、委託者(飼い主)の死亡後も有効です。
ただ、この信託を利用する方法はかなり専門的で、費用や手間もかかります。前述の負担付遺贈や負担付死因贈与に比べてハードルは高いといえます。

ペットの世話をお願いできる人がいない場合

負担付遺贈・負担付死因贈与ともに「ペットの世話をお願いする人」と書きましたが、そのような人がいない、見つからない場合にはどうしたらよいでしょうか。

「人」には「個人」だけでなく「法人」も含まれます。身近にペットの世話をお願いできる人がいない場合、飼い主が何らかの事情で飼えなくなってしまったペットを引き取って面倒をみてくれたり、里親探しをサポートしてくれるような慈善団体、NPO法人を調べて、お願いする必要があります。家族同然の大事なペットをしっかり面倒をみてもらえるか、ご自身で見学に行ったり直接話を聞いたりするのもよいでしょう。

まとめ

以上のとおり、ペットの相続については生前に考えて準備をしておく必要があります。
また、負担付遺贈・負担付死因贈与契約・ペット信託はそれぞれ法律に則った制度でありますが、メリット・デメリットもあります。世話をお願いしたい人や団体などが見つかったら弁護士や司法書士などの専門家に相談し、法律的に漏れのないように遺言書や契約書を作成しておくことが大切です。
私どもも遺言書の作成、贈与契約書の作成などのご相談をお受けしていますので、ぜひお問い合わせください。

この記事を書いた人

藤浪智央
司法書士

藤浪智央

2000年大学在学中に司法書士試験に合格。地元信用金庫勤務を経て2009年7月司法書士登録。
座右の銘は「努力に勝る天才なし」。少子高齢化、個人の権利意識の高まりなど、社会環境の変化により大きく変わっている相続関連の法律や制度に常に対応し、お客様に満足いただけるように心がけています。

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