相続手続きの進め方 

相続手続きの進め方 

ご相続が発生したら、どのようなことをどのような順番で行っていけばよいでしょうか。
この記事では、相続手続きの一連の流れを解説します。

相続手続きの一般的な流れ

亡くなって相続が発生した場合、おおよそ下の図のような流れで手続きを進めていくことになります。

①亡くなった方の相続人を確定します

亡くなった方の生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を取得して、相続人を確定します。
相続人となる方の現在の戸籍も必要です。
なお、2024年3月から、「広域交付」といって、コンピューター化されている戸籍については、最寄りの市町村の窓口で一括して請求できるようになっています(ただし被相続人との関係性によっては取得できない戸籍もあります)。
相続人であるはずの人を漏らしてしまうと、遺産分割の話し合いが無効になるなど、大変なことになってしまいます。
相続人の正しい把握は、相続手続きにとって重要な第一歩です。

⇒ 誰が相続人になるのかについては、こちらの記事をご覧ください。「相続人とは誰のことを指すのか? 相続人の順位やどこまでが範囲かがわかる基礎知識」

②相続財産を確定します

相続財産には、不動産、預貯金、有価証券、自動車、絵画などの骨とう品、ゴルフの会員権などプラスの財産はもちろんのこと、借り入れなどマイナスの財産も含まれます。
亡くなった方が残された権利証、金融機関の通帳(口座の入出金記録)やクレジットカード、各種郵送物などを手掛かりに、財産を確定しましょう。
昨今では、ネット銀行・ネット証券に口座をお持ちの方もいらっしゃると思いますので、デジタル遺産に関しても忘れずに調査しましょう。
遺産を正確に把握することは、相続人の間でどのように遺産を分けるかの話し合いには欠かせませんので、慎重に行いましょう。
相続財産の状況によっては、相続するか、または相続放棄を行うかを検討することになります。
なお、相続放棄を家庭裁判所に申し立てる場合は、被相続人が亡くなったことを知ってから3か月以内に行わなければなりません。

⇒ 相続財産をどのように調べたらよいのかについては、こちらの記事をご覧ください。「相続財産の調べ方」

⇒ 相続放棄をお考えの方は、こちらの記事をご覧ください。「相続する?しない? 判断に迷うケースのときは」

⇒ デジタル遺産については、こちらの記事をご覧ください。「デジタル遺産とは? どのように見つけてどのように手続きするの?」

③遺言の有無を確認します

亡くなった方が遺言書を遺していることもあるかもしれません。
公正証書遺言や自筆証書遺言があれば、原則としてその内容にしたがって遺産の承継業務を行うことになりますので、自宅の金庫などを探してみましょう。

遺言があった場合は、遺言書の中で指定された「遺言執行者」が、遺言の内容を実現するための手続きを行っていきます。遺言執行者が指定されていないときは、家庭裁判所に遺言執行者の選任申立を行います。

公正証書遺言は公証役場で作成したものですので、書式が整っていて、そのまま不動産の登記や預貯金の名義変更に使用できます。
一方、自筆証書遺言を見つけた場合は、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要になるので、封を開けて中を読まないようにしてください。
また、自筆証書遺言は、記載内容に不完全で、名義変更の手続きができるだけの要件を備えていないことがあります。そのときは、相続人全員で財産の分け方について話し合いを行います。

なお、遺言がない場合は、相続人全員で、誰がどの財産を引き継ぐのか、話し合いで決定します。
万が一相続人どうしで揉めてしまい、話し合いが成立しない場合は、家庭裁判所に調停の申し立てを行います。

⇒ 遺言書があった場合の手続きや遺言書の探し方については、こちらの記事をご覧ください。「遺言を見つけたら… 遺言による相続手続きを解説。遺言の探し方も教えます」

⇒ 遺産分割協については、こちらの記事をご覧ください。「遺産の分け方を決める相続人全員の話し合い 遺産分割協議とは」

④名義変更の手続きを行います

遺産分割協議が結果や遺言の内容に基づいて、不動産や預貯金、有価証券、車などの名義変更を進めていきます。

不動産は法務局に相続による名義変更(所有権移転)の登記を申請します。
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続が発生してから3年以内に登記をしなければなりませんので、遺産分割の協議が整いましたら、速やかに登記を行いましょう。

預貯金や有価証券は、それぞれの金融機関や証券会社へ手続きを申し込みます。
各支店で手続きを行ってくれる場合もありますが、相続センターで一括して手続きを行っている場合もあり、多少お時間がかかることもあります。

⇒ 名義変更の手続きについては、こちらの記事をご覧ください。「遺産の名義を変更する」

⇒ 不動産の名義変更については、こちらの記事をご覧ください。「不動産を相続する方へ ~相続登記の義務化!?不要な土地は国に引き取ってもらえるのか?~」

⇒ 自動車の名義変更については、こちらの記事をご覧ください。「所有者が亡くなった場合、自動車はどうなる?  相続手続きの手順と注意点」

⑤相続税の申告を行います

遺産総額が基礎控除の額を超えていると、相続税が発生します。
相続税の申告と納付は、被相続人が亡くなってから10か月以内に行わなくてはなりません。

相続税が課税されるのは相続全体の約1割程度で、決して多くはありません。ですが、10か月はあっという間に経ってしまいます。
相続税が発生するかもしれない方は、早くから準備が必要です。

⇒ 相続税については、こちらの記事をご覧ください。「親が亡くなったけれど、相続税ってみんな納めなければならないの?」

⑥相続した土地の引き取りや家の片づけなど

もし、相続した土地の中に、自分にとっては不要な土地があった場合は、「相続土地国庫帰属制度」の利用を検討してみましょう。
また、必要に応じて、亡くなった方のお住まいの片づけ、墓じまいなどを進めていきましょう。

⇒ 相続した土地の国庫帰属については、こちらの記事をご覧ください。「不動産を相続する方へ ~相続登記の義務化!?不要な土地は国に引き取ってもらえるのか?~」

まとめ

以上、簡単に流れを解説しました。
①から⑥は単独で切り離してというより、重なり合いながら同時に進めていくことになるでしょう。
たとえば、戸籍の取得を進めながら、財産の調査を行い、遺言書の有無も確認し、お住まいの片づけや生前に行った契約の解約も行う、といった具合です。
また、相続放棄や相続税の申告など、期限が設けられている手続きについては、その期限を守るために必要書類を取得したり、様々なことを判断したりしなければなりません。
ご家族が亡くなった悲しみの中で、慣れない手続きに追われるのは大変なことです。
お困りのことやご不明なことは、ぜひ、わたくしたち専門家にご相談ください。

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